天候によって様々に変化する「海の色の美しさ」を、ガラスという素材を使って表現しました。
渚美術館は、もともと陶芸の窯元です。
海辺の暮らしをテーマとして、黒真珠やアイランドブルーなどの作品を制作・発表してきました。
そのため、工房には陶芸用の大きな窯(かま)が二つあります。
そして、「ガラス工芸」に必要な窯の温度は1000℃以下なので、1300℃まで昇温できる陶芸の窯があれば、それを使ってガラスの成型ができます。
そこで、その窯とガラスの透明感を生かして企画したのが、この「アクアマリン」シリーズです。
晴れた日の海の色、夕方の海の色、思い出の中の海の色・・・・
心の中に、美しい海を感じていただけたら幸いです。
宝石のアクアマリンは、英語でAquamarineと書きますが、その語源は「Aqua(水)」と「Marine(海)」の二つの単語から成り、「海の水のような色の宝石」という意味になります。
「海の色」というと、皆さんは「青」をイメージするのではないでしょうか?
しかし、実際の海の色というのは、その深さや海底の様子(砂、岩、海草などの有無)、さらに天候などによって様々に変化します。
そして宝石のアクアマリンにも、その海の色と同じように色々な色があります。
中でも、「ライトブルー(水色)」の透明感あふれるアクアマリンは非常に美しく、かつ高価です。
私たちのような庶民が「普段身に着けるアクセサリー(ファッションジュエリー)」としては、ちょっと手が出ないと言えるかもしれません。
そこで、渚美術館では「ガラス」という素材を使って、「アクアマリン色のアクセサリー」を作ろうと考えました。
ガラスの持つ透明感は、「海の水」を表現するのにまさにうってつけだと考えたからです。
もちろん、「水」だからと言って、ただ「透明なガラス」の作品を作ったのでは芸がないでしょう。
そこで、ガラスに色を着ける必要が出てきます。
では、ガラスの色とは、一体どうやって作り出すのでしょうか?
実は、ガラス工芸における彩色というのは、それほど難しくありません。
陶芸ではいくつもの原料を調合して「”その土に適した”求める色=釉薬」を自分で作り出さなければなりませんが、ガラス工芸ではすでに板状や棒状、あるいは粉末として市販されている様々な「色ガラスの元」を使うことができるからです。
それらを窯で溶かしたり、曲げたり、混ぜたり、切ったり、削ったり、貼り合わせたりすることで、ガラス作家は作品を作ります。
陶芸は「高温焼成による化学変化」を利用して”土から焼き物を”生み出しますが、ガラスでは「低温焼成による物理変化」を利用して、”ガラスをガラスに”加工するのです。
宝石としてのアクアマリンは、確かにきれいだなと思います。
しかし、ガラス工芸によって生まれる人工のアクアマリンも、「鉱物」にはないシンプルな透明感と、まさに「海のしずく」のような柔らかな形が魅力的です。
日常使いのアクセサリーとして、様々な場面で楽しんでいただければと思います。
<このページのTOPに戻る>